本展は「抑圧からの解放」をテーマにした
現代魔女パラレル宇宙子のアート・アクティビズムで、
映像作品を用いた儀式とインスタレーションの
パフォーマンス(特別展「境界なき未完の祭儀」)を通じ
抽象を現実に引きずり出す「生きた創造のプロセス」
をたどります。
自然信仰のアニミズムやネオペイガニズム、
フェミニズムを体現する現代魔女が
1年間、季節のサバトや儀式を行う意義に沿って
デザインし続けた「儀式装束 - 神衣」の
抽象を穿つ具現化の爆発と抑圧からの有機的反乱。
肉体からの解放と生命感の欠如に抗う本展の作品は、
境界線を持つことで生まれるマテリアルの造形美こそ
抽象世界から現実に流れ込むエネルギーの様であり、
熱く、有機的で、創造の熱狂に満ちた未来を提示する
「生命(いのち)の爆発」である事を示唆しています。

儀式装束を纏う肉体は、
魔術的なエネルギーを放つ「肉体の復権」であり、
服を「依り代(よりしろ)=肉体を持つ媒体」
とすることで、単なるファッションではなく、
抽象(霊的存在)と現実の具体的な接点として機能させる
「魔術的生命体」がリアリスティックに拡張されます。

境界線を曖昧にする儀式。
移ろいゆく抽象の輪郭が鮮明になる時、
わたしは’ソレ’を生きている。
混沌と流れゆく、
この不確実な世界で生き抜く為に必要なもの。
確かな実感を感じられるもの。
無秩序な混沌から現実に再構築された
「対極のキメラ」は、
私を’わたし’たらしめる「依り代(よりしろ)」。
肉体と精神が融合した’わたし’たちの集合的創造は、
より大きなスケールの未来魔術と
なるのではないでしょうか。
デザインのはじまりは、「対極の循環」を観測する。
アニミズムが教えるように、
あらゆる物質には霊魂が宿り、
それは生と死、具象と抽象の相反する間を
絶えず往還している。
「生きるために死に、死ぬために生きる。」
この残酷で美しい祝祭の円環図にこそ、
真のクリエイションが潜んでいる。
ケルトの暦「Wheel of the Year(1年の車輪)」の
巡る8つのサバト(祝祭)を軸に据えるのは、
現代魔女パラレル宇宙子にとって創造と言う営みが、
自然界に存在する「対極の交代」の躍動
- 光の増幅と減退、生の謳歌と死の静寂 - を、
自らの身体で受け止める、
終わりのない旅であるからに他ならない。

デザインの時間は、境界を曖昧にする「儀式」そのもの。
実体のないキメラの呼吸が渦巻く深い沈黙へと
意識を沈め、
全てが存在する深淵からインスピレーションを
引きずり出す時、
はじまりの線が刻まれる。
私たちは、生きるために死を、
描くために空白を必要とする。
白い紙にその「意志(霊魂の宿り)」を
デザインする事は、無から有を生み出すと同時に、
無限にあった可能性を一つに絞り込み、
他を「殺す」ことでもある。

この壁一面に広がるデザインの断片たちは、
私の中に潜む『キメラ性』をひとつひとつ抽出し、
破壊と創造を幾度と繰り返しながら再構築した
「創造の礎」の軌跡である。
現代という時代において、
私たちはしばしば流行の波にのまれ
「量産される正解」を追いかける。
しかし内なる深淵に潜む「キメラ」は、
決して飼い慣らされることも、
均一化されることもない、
不揃いで野蛮な生命力に満ちている。
それは、時に矛盾し、時に反発し合う、
名付けようのない感情や記憶の断片である。

このブースに並ぶ「対極のキメラ」たちは、
曖昧な抽象の輪郭を一本の針と糸で手繰り寄せ、
「神衣」と言う依り代にその霊魂を宿し続けた
儀式装束である。
「創造の礎」が結晶化した唯一無二の個は、
何ひとつ同じものがない。

ここにあるのは「量産される正解」ではなく、
均一化される「個の死」への抵抗と、
呪術や伝統の古めかしさを前衛的に超えていく
アウトサイダーな現代魔女そのものかもしれない。
流行に従うのではなく、
時代にあった新たな伝統を創造していく。
モードに宿る異端の装束から、
自分自身の「礎」を見つめてほしい。

女性の針仕事は、フェミニズムや社会運動を支える
原動力となってきた側面がある。
戦前、男女の教科書が異なる美術教育の中で、
戦時下の女子学生は裁縫やミシンを習い、
軍服やパラシュートを縫っていた。
戦いの地で「何もできない」と思われていた女性たちが、力を合わせて成し遂げた活動。それが、
一枚の布に赤い糸で千個の玉結びを刺した「千人針」だ。
これは女性たちが主体的に連帯した草の根の表現である。

駅前の街灯に立ち、大きな声で
「縫ってください。一針ください。」と呼びかけ
共同制作された千人針は、
戦いの地へ向かう【戦士の為の祈り】であると同時に、
自らの存在意義を確認する行為でもあった。
女性たちは、ものづくりの力を通じて語り、
社会の中での孤独を解消し、
そこでの情報交換から政治や参政権の問題を語り合った。
この意思表明の連鎖こそが、
女性の社会運動へと繋がっていった。

ジェンダー論の理解が社会に広がった今、
皆で作る作品「千人針TEXTILE」は、
時を経てその意味を変えていく。
縫う、編む、織る、刺す、私たちの一針一針に、
社会や抑圧へ抗う力があるのではないだろうか。

AIテクノロジーの技術革新の未来で
人々が気付きゆく「価値在るもの」は
代替不可能な「生きた創造のプロセス」
なのだろうと思います。
デザインの原画展や実物の作品が展示される空間で、
視覚と感覚に直接訴えかける
儀式と映像のインスタレーション
【特別展「境界なき未完の祭儀」】は
個人的な儀式の枠を超えた「創造と社会との対話」を、
非言語的な芸術的行為へと昇華したパフォーマンスです。


日常を断ち切る神聖な空間で、通常展示とは一線を画す
「未完の瞬間」に立ち会う特別な体験。
常に変化し続ける「生きた創造のプロセス」、
円環の営みそのものが作品であるという
現代魔女パラレル宇宙子の世界観に触れ、
生きづらさを感じる社会への問いかけについて
考えるきっかけとなることを目指しました。
ハサミを使わず手で布を割く演出は、
死装束を作る時の所作。
死装束の作法には独特のルール
(逆事:さかごと)がいくつもあり、
日常とはすべて逆の動作をすることで、
「死の世界と生の世界を区別する」という意味がある。
糸の結び目を作らなかったのは、
生命の復活を遂げた魂が留まらないように、
返し縫いをしなかったのは、
迷わずひたすら前へ進めるように、との祈りから。


人が亡くなる時、わたしたちは’生前’お世話になりましたと言うけれど、
今と言う時代は、AIの技術革新により、
人々が死後(抽象)の世界へと憧れを抱いている
ようにも感じる。
見えるものも見えないものも等しく丁重に扱う。
魔女、だからこそ現実を無視しない。
何が生前か、何が本当の誕生か、自分にとっての屍はどこか、どこをどう生きるのか。自分で決める。
現代魔女のアーツ・アンド・クラフツ運動として、対極のキメラ展を象徴するスローガンを添えました。
ご来場の皆様にひと針ひと針参加して頂いた共同展示作品
「千人針TEXTILE」は、
一人一人、選ぶ糸の種類も、編む幅や大きさも、
かかった時間もバラバラだけど、
全体として一枚のテキスタイルにまとまる様に着目し、
「WE ARE BUGS. WE ARE BETTER FOR IT」
(訳:人間はバグだ。そのままでいい。)のパッジを添え、
特別展にて共同展示作品を完成させました。



産業革命の均一化された大量生産品による
創造性の衰退に抗い、
人間の手仕事に「魂」を取り戻そうとした
アーツ・アンド・クラフツ運動の精神は、
現代の規格化された社会に対し『異端』を貫く
現代魔女の呪術的抵抗運動と深く共鳴する。
ゴリラのマスクを被ったフェミニスト・アート集団
として有名なゲリラ・ガールズは
Futuraの長体を用いてメッセージを発信し、
社会派ファッションデザイナーとして知られる
キャサリン・ハムネットは
Helveticaを使用したメッセージTシャツを着せた
モデルたちをランウェイに送り出した。
タイポグラフィはしばしば芸術として機能し
強烈なメッセージを乗せて
社会にインパクトを与える。
こういったワード・アートに使用されるフォントは
視覚的に重要な役割を持つ。
今回制作したスローガントートでは、それぞれ歴史的な意味を持つフォントを採用している。

[DON’T JUST FOLLOW THE PROMPT]には、
有機的で美しいストロークを持つ
アール・ヌーヴォー調の書体
Carilliantineを用いた。

アール・ヌーヴォーの思想的背景には、19世紀
イギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動がある。
ウィリアム・モリスやジョン・ラスキンらは、
工業化の大量生産品による創造性の衰退に抗い、
自然のモチーフや手仕事に根ざしたフォルムこそが
社会を再生すると考えた。
AIが席巻する現代は、19世紀の産業革命と同様の
転換点に立っているのではないだろうか。
テクノロジーが加速する今こそ、
あらためて手仕事と創造性の価値を問い直したい。


[RESPECT THE FLAWS HONOR THE SWEAT]と[CREATIVITY LIVES OUTSIDE ALGORITHM]には、
Futuraを基にした書体を採用している。
Futuraは、バウハウスで教鞭を執っていた
パウル・レナーが1927年に制作した書体であり、
洗練された普遍的なデザインを特徴とする。
今回使用した Futura 100 は、
2027年に誕生100周年を迎えるにあたり
制作されたフォントである。
100年前に生まれたFuturaは、
現在もなお多くの人々に愛され、
さまざまなフォントベンダーによる解釈と
アップデートを通じて、
時代に応じた新たな姿へと
生まれ変わり続けている。

[WE ARE BUGS.WE ARE BETTER FOR IT]は
タイポグラフィ史において最も重要な書体の
ひとつであるHelveticaを使用している。
駅名標やコーポレートロゴなど、
私たちの日常に深く浸透してきたHelveticaは、
同時に数多くのワード・アートや
プロテスト・バナーにおいても用いられ、
強いメッセージを社会に届けてきた。
バウハウス、アーツ・アンド・クラフツ運動、
そしてHelveticaの誕生。
いずれもデザイン史における最も重要な出来事
であり、その思想と実践は今なお
私たちの未来を形づくっている。
私たちはこうしたデザインの歴史に敬意を払い、
それぞれのスローガンにふさわしいフォントを
選定した。
気に入ったメッセージのスローガントートを
手に取り、日常の中に取り入れること。
それは、特別な行動ではなく、日常から始められる
ひとつの社会運動だと私たちは考えている。



EXHIBITION SHOPのアイテムは、
ONLINE SHOPより購入できます。
「対極のキメラ展」ダイジェスト映像と共に、
多様な側面から楽しんで頂けると嬉しいです。

【Credit】
Artist / Art Direction & Design :
Parallel Uchuko (alt)
Film director / Stage director :
Maki Indo (Indo films)
Cinematographer :
Masato Indo (Indo films)
Technical Direction / Hair & Makeup :
Mizuho Hamamoto(mizuiro)
Technical Direction / Photographer :
Lancia Kitabatake
Flower Artist :
chico (angels.bouquet.chico)
Graphic Design & Space Planning :
Aki Makita (alt)

現代魔女パラレル宇宙子
広告デザインのアートディレクター/デザイナ ーを経て、渡英。
Central Saint Martins - University of the Arts Londonにて、テキスタイル&ファッションデザインを学んだ後
現代魔女/アーティストとして活動。
【儀式】と言う「精神的な実践」を
「ファッションを通じたアートの実践」として再構築し、魔術をアートに昇華させている。
メディア出演・取材・インタビュー・執筆等、
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